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スマトラ、カロヒルで採集したジャノメチョウの仲間(3)
   Neorina, Lethe, Melanitis属など

これまで「スマトラ、カロヒルで採集したジャノメチョウの仲間(1)としてウラナミジャノメ(Ypthima属)の6種について写真を紹介した。カロヒルで採集したジャノメチョウの仲間(2)ではコジャノメ(Mycalesis属)など6種を並べた。ここではそれ以外のジャノメチョウの仲間で、印象に残ったものを紹介しようと思う。Neorina, Lethe, Melanitis属などのチョウである。

Neorina lowii モンキムカシヒカゲ

                                            
                                                             
                モンキムカシヒカゲ    左は裏面、  右は表面    このチョウはマレー半島とスマトラ、ボルネオに分布し、、
           飛んでいる姿はモンキアゲハと間違うほどの大型で、後翅の白斑が目立つヒカゲチョウである。
           姿を見ても、飛翔は敏速で、ネットすることは容易ではない。カロヒルでは熱帯雨林の周辺で見られた。

           Ragadia makuta モリシマジャノメ

このモリシマジャノメ(左:裏面・右:表面)はスマトラの他、マレー半島、ジャワ、ボルネオに分布している。熱帯雨林のやや暗い林の周辺で見られた。翅は薄く、裏面の縞模様が表面からも透き通るように見える。裏面には前翅に7個、後翅に6個の眼状紋が並ぶ。飛翔は緩やかで、見つければ採集は難しくない。

Lethe europa シロオビヒカゲ 

シロオビヒカゲ 左:裏面  右:表面

シロオビヒカゲは日本の八重山諸島にも分布するが、中国南部、インド、フィリピン、インドネシア全域にわたって分布が広い。メスには前翅表面に白い斜帯があるが、オスには目立たない。塚田編「東南アジア島嶼の蝶第3巻」にはスマトラ産の亜種malaya は稀であると書いてある。この標本はカロヒルのバンダルバルの農村周辺の藪で得られた。

Lethe confuse ヒメシロオビヒカゲ

 

ヒメシロオビヒカゲは日本・台湾には分布しないが、中国南部・インドシナ半島・マレー半島・スマトラ・ジャワに分布する。雌雄とも前翅の白い斜帯を持ち、木の下や藪の中でも目立つ姿をしている。裏面には前翅に2個、後翅に7個の眼状紋がある。スマトラのカロヒルでは農家周辺で普通種だった。左は裏面、右は表面。
 

           Lethe mekara ウスイロメスチャヒカゲ

ウスイロメスチャヒカゲはインドのアッサム地方からタイ・マレー半島を経て、スマトラ、ボルネオに分布するチョウで、森林性とされている。今回も森林の中で得られた。しかしカロヒルではあまり多いチョウではなく、破損したものしか得られなかった。後翅裏面には6個の眼状紋を持つとされるが、この標本では一部が欠損している。左は裏面、右は表面

           Melanitis zitenius キオビコノマチョウ

 



キオビコノマチョウはインドからタイ・マレー半島を経て、スマトラ・ボルネオ・ジャワに分布する。スマトラ産は前翅表面の黄褐色の斜帯が明瞭で、森林で得られた。日本でも見られるクロコノマチョウ、ウスイロコノマチョウも得られるが、ここでは本種のみ示す。

左は裏面、右は表面

 

 

スマトラのジャノメチョウの仲間 まとめ

ここまで201811月と20195月と9月にスマトラのカロヒルで採集したジャノメチョウの仲間を(1)(2)(3)と3つに分けて紹介したが、採集した場所は標高1000mから1500mの高原地帯に限られ、より高温多湿の平野部は調べていない。そのため、スマトラに産するとされている種類でも写真をお目にかけられないものが少なくない。例をあげると、Mycalesis属(コジャノメ属)は塚田悦造編集「東南アジア島嶼の蝶」ではスマトラに11種がいるとされるが、ここでは5種をあげたのみで、今後さらに調べる必要がある。

しかし、スマトラ・マレー・ボルネオに分布しているものは、マレーシアの採集規制が厳しくなり、ボルネオは広大な面積で交通が不便のため、採集情報が乏しく、スマトラが貴重な採集地と云うことができる。

モンキムカシヒカゲ、マルギナタコジャノメ・キオビコノマチョウやスマトラ特産のカスミウラナミジャノメなどは今回スマトラを訪問して、初めて手にした種類であった。