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スマトラのカロヒルで見られたタテハチョウの仲間(1)イナズマチョウ類

イナズマチョウの仲間はインドネシアの含まれる東洋区を代表するタテハと云われ、熱帯・亜熱帯の照葉樹林の周辺を活発に飛び回る種類で、イナズマチョウ属Euthalia,コイナズマ属Tenacia,ヒメイナズマ属Cynitis,オオイナズマ属Lexiasなどに分かれ、塚田編「東南アジア島嶼の蝶」には80種を超える種類がいる。この仲間は日本には分布せず、台湾に1種いるが、大部分は中国南部より南のインドシナ半島、マレーシア、インドネシアの島々などに分布する南国のチョウである。このうちスマトラには24種が分布するが、カロヒル高原で採集できたものを紹介して見よう。





 

ここにここに示したのはヤマオオイナズマ Lexias dirttea のオス で,左は表面、右は裏面である。

 インドからインドシナ半島、中国南部、マレー、スマトラ、ジャワ、パラワンなど分布は広く、20以上の亜種に分けられている。

スマトラ産のものはmontanaという亜種で、他の地域とは亜種が異なる。カロヒルでは熱帯雨林の周辺のやや開けた場所で見られ、地表付近を飛び、翅を広げて止まるが、近づくとすぐ飛び立ち、敏捷で、なかなか採集できなかった。

表面のるり色を輝かせて飛ぶ南国のチョウである。姿を見てもネットに入れるのは難しく、イナズマチョウのコレクターが多いのも頷けるチョウだった。





 

ヒメオオイナズマ Lexias canescens  オス 右は表面、左は裏面

このヒメオオイナズマはオスもメスも同じような斑紋をもち、オスにはルリ色の斑紋はなく、メスのように焦げ茶色の地に黄白色の斑紋が並ぶ。

このチョウの分布はスマトラ、マレー、ボルネオとその間の島とされ分布はあまり広くない。

タイではマレーに近い半島部に産するとされている。スマトラのカロヒルでは農村部に近い熱帯雨林の廻りで採集された。飛翔力が強く、敏捷で採集は容易ではなかったが、翅を広げて地面近く止まったところを採集できた。





 

ハリナガコイナズマ  Tanaecia pelea オス 左は表面、 右は裏面

コイナズマ Tanaecia属を代表する種とされ、マレー半島基部のタイからマレーシア、スマトラ、ボルネオとその周辺の島から記録がある。
オオイナズマ類より一回り小型で、平地から山地にかけて分布するとされ、個体数も多いとされるが、スマトラのカロヒル高原では多い種ではなかった。農村部に近いバンダルバルで2個体得られたのみだった。やや明るい森林と森林のまわりで得られた。

 

カブトコイナズマ Tanaecia aruna  右:表面、 左:裏面

このカブトコイナズマは農村部に近い熱帯雨林の周辺で採集できた。このチョウもマレー半島、スマトラ、ボルネオとパラワンに分布するもので、カロヒル高原では多いものではなかったが、少数は5月・9月・11月ともえられている。
飛翔は敏速で、採集は近づくのを待って、捉えたが、動くものには神経質に見えた。

 

フトアオヒメイナズマ Cynitia cocytina  オス 左:表面、右:裏面

ヒメイナズマ属はスマトラに5種いるとされているが、本種は平地から山地まで分布する普通種とされている。オスは前翅の後半の外縁と後翅の外側の半分をルリ色で占めている。

マレー半島、スマトラ、ボルネオに産するチョウで、カロヒル高原では農村に近い林の縁で見られた。

ここまでイナズマチョウの仲間を5種挙げたが、いずれも飛翔が速い、タテハチョウで、採集してみたいと思わせる熱帯・亜熱帯のチョウで、種類も多くコレクターが多いのもうなずけるチョウである。