スマトラのカロヒルで見たタテハチョウの仲間(2)
チャイロイチモンジ、イシガキチョウの仲間、エグリゴマダラなど
このチョウはインドからミヤンマー、インドシナ半島、マレー、スマトラ、ボルネオ、ジャワ、小スンダ列島に広く分布するが、フィリピンとスラウェシにはいないとされている。
ソトグロカバタテハ Rhinopalpa polynice 左:表面、 右:裏面
このチョウは1属1種で似たチョウはいないとされている。表面の地色はカバ色で、外側に黒い帯状の斑紋がある。分布は広くアッサムからミヤンマー、タイ、マレーシア、スマトラ、ボルネオ、フィリピン、スラウェシ、ジャワに及ぶ。しかし、スマトラのカロヒル高原ではあまり多くなく、平地の方が多いと思われる。中型のタテハで、翅の縁は尖った部分があり、ギザギザしているが、翅は柔らかく、飛び方も緩やかだった。
ニベアイシガキ(ツマグロイシガキ)Cyrestis nivea 左:表面、 右:裏面
ニベアイシガキはスマトラ、ボルネオ、ジャワ、マレー半島 ミヤンマーなどに分布するイシガキチョウの仲間で、翅を広げて止まることが多く、緩やかに飛び、湿地に降りて吸水することもあった。地面に降りている時は採集は容易だった。
しかし、スマトラにはよく似た仲間がいるので、採集する時は、種類を見分ける必要があった。次に似た種類を調べて見よう。、
マエナリスイシガキ Cyrestis maenalis 左:表面、 右:裏面
このマエナリスイシガキはスマトラではニベアイシガキと同じ場所で見られたが、分布を調べて見ると、こちらはタイ以北には見られず、スマトラ、ボルネオ、ジャワ、フィリピンなどで記録があり、ニベアイシガキより南に住むチョウである。飛び方もニベアイシガキと同様で湿地に降りる所も同じだった。
日本にいるイシガキチョウ Cyrestis thyodamas は本州南部・四国・九州、沖縄、台湾、中国南部、インドシナ半島、インドに分布するが、マレーシア以南には分布せず、種類が入れ替わる。
ナミダアサギゴマダラ Hestinalis namida 左:表面、 右:裏面
アサギゴマダラ属のチョウは東南アジアで6種知られているが、ナミダアサギゴマダラはスマトラ特産のチョウで、アサギマダラに擬態する種類とされている。色も翅の形も飛び方もアサギマダラに似て、緩やかに飛び、一見アサギマダラと思うほどである。
カロヒルではあまり多いチョウではなかったが、トバ湖の上のシラライで2個体採集した。学名のnamidaは日本語由来かと思わせるが、命名者はFruhstorferで、1906にウイーンの雑誌に発表されているので、日本語由来ではないと思われる。平嶋義宏氏の「蝶の学名」にnamidaの説明は無いが、近縁のHestinalis namaの説明に多分梵語由来とされているので、梵語由来かもしれない。
擬態に関してはスマトラとジャワに住むアサギマダラの仲間 Parantica pseudomelaneus に似せているとされている。このチョウは鈴木利和さんがシラライで採集されている。
エグリゴマダラ Euripus nyctelius ♂ 左:表面、 右:裏面
このエグリゴマダラはメスとオスで翅の色も形も異なる雌雄異形とされている。オスの後翅は下部がえぐられたようにくぼむ特異な形をしているので、名前はエグリゴマダラとなっているが、メスは横長の翅で、えぐられず、マダラチョウに擬態すると云われている。
このチョウはインド、インドシナ半島、中国南部、マレーシア、スマトラ、ボルネオ、ジャワ。フィリピンと東南アジアに広く分布するが、メスは生息地にいるルリマダラ類に擬態すると云われ、スマトラではシロモンルリマダラ Euploea diocletianus に擬態し、翅は横長になり、飛び方も緩やかになると図鑑には書いてある。現地でメスを探したが、メスは得られず、オスのみ採集された。
シロモンルリマダラ Euploea diocletianus 左:表面、 右:裏面
このチョウはスマトラのカロヒルではシボランギトの川の近くで採集したが、オスばかりでメスは得られなかった。上に述べたエグリゴマダラに擬態されると云われるチョウで、分布はスマトラの他にインド・ミヤンマー・インドシナ半島・マレーシア・ボルネオ・ジャワなどに広がる。マダラチョウらしく緩やかに飛ぶので、擬態したものが混じっていないか?9匹採集したが、まだ擬態種は得られなかった。
アッサミナミイチモンジ Athyma assa 左:表面、 右:裏面