インドネシアのシジミチョウの仲間(2)尾の長いシジミチョウ
日本にはオナガシジミというちょうがいるが、それほど長い尾状突起を持つわけではない。
しかし、インドネシアには後翅よりも長い尾をもつものも見られるし、尾が2本のものに加え3本のものも見られる。そのような例を調べて見よう。
Cheritra freja モリノオナガシジミ
モリノオナガシジミ オス 左:表面 右:裏面
このチョウは展翅した標本の開長が32㎜ぐらいの中型のシジミチョウだが、尾が15mmと長く、白い裏面を見せて止まっていると長い尾が目立つチョウである。 北インドからタイ、ラオス、マレー半島、スマトラ、ジャワ、バリ、などのインドネシアに分布する。
この標本は2019年9月にスマトラのカロヒルで、川に近い道の脇で採集したもので、数回見られた。採集には長い尾を傷つけないように細心の注意が必要だった。
Loxura atymnus ハタフリシジ
ハタフリシジミ オス 左:表面 右:裏面
ハタフリシジミは日本産のアカシジミの尾が長くなったようなチョウである。しかし後翅の下の方は長く伸び、太い尾状突起になっている。
このチョウの分布は広く、インドからミヤンマー、インドシナ半島、中国南部,海南島、マレー、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、バリ、ロンボク、などで、ダブレラの1986の図鑑にはスラウェシは未確認としているが、バネーライト2003のスラウェシの蝶にはリストアップされている。この標本はバリ島の低山帯で採集した。
Drupadia ravindra トラフミツオシジミ
トラフミツオシジミ 左:表面 右:裏面
このチョウは後翅第2脈に長い尾をもつ他に、その両側に短い尾をもっているので3本の尾のミツオシジミと呼ばれている。日本国内にはミツオのシジミはいないので、初めて採集した時は良く眺めたことを思い出す。このチョウはミヤンマーからタイ、ラオス、中国南部、マレー半島、スマトラ、ボルネオ、ジャワなどが分布域にあげられている。タイの蝶の図鑑には地域、季節によって変異の大きい種類と書いてある。木の枝に止まっている時は後翅裏面のまだら模様が目立つチョウで、この標本はジャワ産のものである。
Drupadia theda クロトラフミツオシジミ
クロトラフミツオシジミ 左:表面 右:裏面
このチョウも同じ属なので、尾が3本ある。クロトラフミツオシジミと名前にクロがついいているが、メスには表面にオレンジ色の斑紋がある。分布はミヤンマー、タイ、インドシナ半島、マレー半島、スマトラ、ボルネオ、スラウェシ、パラワン、フィリピンで、前にあげたトラフミツオシジミと違い、ジャワにはいないとされている。この標本はスラウェシ南部のバンチムルンで採集した。低山帯の林の縁で見られた。バネライト(2003)はスラウェシには本種のみが産し、他のDrupadia はいないと述べている。
Iraota rochana シロモンウラニシキシジミ
シロモンウラニシキシジミ 左:表面 右:裏面
オスの表面は光沢のある濃いブルーで、裏面の白い紋が野外でも目立つチョウである。この標本の尾は2本だが、短い尾を入れると3本のものもいる。開長40㎜ぐらいの中型のシジミチョウで、分布はインド、ミヤンマー、インドシナ半島、マレー、ボルネオ、フィリピン、スマトラ、スラウェシ、ジャワ、バリと広い。熱帯雨林の中や損御周辺で見られた。この標本はスラウェシ南部のキャンバ付近の山地で採集した。