インドネッシア産のルリタテハから亜種について調べて見よう
ルリタテハは日本から沖縄・台湾・中国・インドシナ半島・ミヤンマー・インド・インドネシア・フィリピンと分布が広い。離れたところのものは亜種が違うと云われることが多い。
亜種とは何かについて、生物学事典には、「亜種(Subspecies)は種の下位の分類階級で、種が地理的または生態的に隔離され形態的に差異を生じている群に分かれていると認められる場合に、それぞれをその種の亜種といい、種名の後ろに亜種名を付した3名法で表す。」
と書いてある。インドネシアは多くの島からなり、それぞれが隔離されているので、多くの亜種が知られている。ルリタテハはこの良い例と思われるので、調べて見よう。
ルリタテハ Kaniska canace javanica (インドネシア、ジャワ島亜種)
上は表面、下は裏面
ここに示した標本の写真はインドネシア、ジャワ島東部にあるアルコプロ山(3089m)の中腹で採集されたものである。翅の表面ではルリ色の帯は幅が広く、後翅で著しい。前翅の前縁にも白い斑紋が無く、青い紋になっている。日本産のルリタテハと比較してみよう。
ルリタテハ Kaniska canace no-japonicum (日本産亜種)
上は表面、下は裏面
この標本は静岡市清水区三保の自宅に植えてあったシオデSmilax oldhami (ユリ科)の葉に幼虫が見つかり、これを飼育して得た蛹がOct-11-2002に羽化したものである。この時期に羽化したものは、成虫越冬するものと思われ、裏面は黒っぽいが、表面のルリ色の帯は前翅・後翅とも同じ幅で細い。前翅の前縁に白い大きな斑紋がある。
ジャワ島産の亜種ではこの白い斑紋が無く、青くなっている。
白水隆著の「原色台湾蝶類大図鑑」のルリタテハの説明には台湾産の亜種でも、この白斑は青に代わっており、亜種名をKaniska canace drilonとしている。
白水によるとルリタテハは日本・沖縄・台湾・中国南部・フィリピン・ジャワなどで別亜種になっていて、全部で14亜種が知られると書いてある。
しかし、塚田悦造編「東南アジア島嶼の蝶」では一部が統合され13亜種になっている。
塚田編の図鑑からルリタテハの分布図を下に示す。日本産の亜種はno-japonicumとされ、ジャワ島産のものはjavanicaになっている。属名と種名は同じである。
この分布図から日本のルリタテハは一番北東に分布する種類で、分布の中心はもっと南であることが判る。ここで取り上げたルリタテハの亜種の場合は斑紋の差が明瞭なので、生息地が違うと亜種も異なることが、判り易い。しかし、亜種同士の区別は差が小さいことが多く、熟練しないと区別が付けにくいものが多い。