東に行くほど青くなる インドネシアのカラスアゲハの仲間
青いチョウを憧れる人は少なくない。インドネシアのジャワ、バリ、スラウェシで採集すると、得られるカラスアゲハの仲間にアオネアゲハ(Papilio peranthus)がいる。
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翅の付け根の部分がブルーで裏はカラスアゲハに似ている。飛翔は速く、飛んでいるところを網に入れるのは簡単ではない。始めてバリ島で採集した時は走り回って、汗をかきながらやっと網に入れた思い出がある。
次に見てもらいたいのはスラウェシ島特産のブルメイクジャクアゲハ(Papilio blumei)である。以前はオオルリオビアゲハと呼ばれていた。アオネアゲハより太い青い條が上下に連なり、尾錠突起まで青い色が連なる。このチョウはスラウェシ島特産で、低山帯に分布し、飛び方は迅速で、採集は容易ではない。やっと網に入れても尾状突起が折れやすく、完品を手にすることは難しかった。アオネアゲハより青緑色の帯が美しく、網に入れた時の喜びは大きかった。
スラウェシ島の東側にあるのはモルッカ諸島(現在はマルク諸島)で、北にはハルマヘラ島、バチャン島などがあり、南にはアンボン島、セーラム島などがあり、更に東には西イリアン(パプアニューギニア)がある。
ここまで行くとカラスアゲハの仲間は更に青くなり、オオルリアゲハ(Papilio Ulysses)がいる。
写真のように前後翅とも半分以上が金属光沢のあるルリ色で、あこがれの青いチョウである。このチョウはセーラム島で採集されたものだが、限られた場所に吸水に集まることがあり、そのような場所では取り易いと聞いたが、私が案内してもらった時はしばらく雨が降らず、乾燥していて、吸水場にチョウはいなかった。コンロン花などに来ることがあるし、青い翅を枝先に止めておくと、近づいてくる習性がある。
ここに挙げた3種のチョウ(カラスアゲハの仲間 Achilides類)の分布を調べて見よう。この分布図を次に示す
アオネアゲハは黒い線で示したが、ジャワ島からバリ・ロンボク・スンバワ・アロール島までの小スンダ列島とスラウェシ島に分布している。
ブルメイクジャクアゲハは赤い線で示したが、スラウェシ島の山地・低山地に分布している。
オオルリアゲハは一番東側のモルッカ諸島(マルク諸島)から西イリアン・パプア・ニューギニアとビスマルク諸島とオーストラリア北部に分布し、多くの亜種に分かれている。オオルリアゲハの分布は青い線で示したが、インドネシア以外の地域は省略してある。
このように並べて見ると、アオネアゲハがいるのはジャワ・バリからスラウェシまで、ブルメイクジャクアゲハはスラウェシ島の山地とやや東に中心が移り、オオルリアゲハは更に東の島のハルマヘラ・バチャン・アンボン・セーラムなどのモルッカ諸島から西イリアンにかけて分布し、最も青い色の面積が広く、東に行くほど青くなるという、カラスアゲハの仲間の特性が示されている。