インドネシアのフタオチョウの仲間(2)Charaxes属のチョウ
こフタオチョウにはフタオチョウの仲間(1)で述べたPolyura 属ともう一つCharaxes属のものがいる。東南アジアにはこの属に27種が知られていると東南アジア島嶼の蝶には書いてある。いずれも飛翔力の高い、敏捷に飛ぶ、大型のタテハであるが、採集は容易ではなく、餌で誘き寄せるなどの技術が無いと入手できないことが多く、この仲間を集めたいコレクターが多いチョウの仲間である。これまで入手したものを紹介して見よう。
Charaxes solon ソロンフタオ(キオビフタオ)
ソロンフタオ(キオビフタオ) 左:表面、 右:裏面
翅表面の地色が黒褐色で、白または黄白色のすじのあるのはCharaxes属の中では本種だけなので、分かりやすい。分布は広く、インド・ミヤンマー・インドシナ半島・マレー・スマトラ・ボルネオ・スラウェシ・ジャワ・フィリピン・小スンダ列島などに見られる。この標本はスラウェシ島南部のバンチムルンで採集した。後翅の第2脈と第4脈が伸びて尾状突起になるが、本種は2本とも同じぐらいの長さだが、内側の第2脈のものは短くなっているものが多い。
Charaxes nitebis ニテビスフタオ
ニテビスフタオはスラウェシ島とこれに隣接するバンガイ諸島・スーラ諸島などからのみ知られる種類である。ジャングルの周辺で姿を見る事があり、この標本は水の枯れた川岸で採集した。大型のタテハで飛翔力は強いので、採集は簡単ではなかった。フタオチョウと云っても後翅第二脈の突起は小さく、僅かに三角形に出ているのみである。
Charaxes affinis アフィニスフタオ
アフィニスフタオ 左:表面、 右:裏面
このチョウもスラウェシ島およびそれに隣接する島のみに生息する種類とされている。前翅の先端が尖り、茶色い地色で、後翅第2脈の突起は小さな三角形で、よく見ないとフタオに見えないチョウである。スラウェシ中部のパルからパロロへ出かけた時、牛糞に来ていたものを採集した。スラウェシでも簡単には見られないチョウだった。
Charaxes Bernardus ベルナルダスフタオ(ツマグロチャイロフタオ
ベルナルダスフタオ 左:表面、 右:裏面
大型のフタオチョウで分布も広く、ネパールヒマラヤからミヤンマー・中国南部・インドシナ半島・マレー・スマトラ・ボルネオ・ジャワ・バリまでのウォーレス線の西側に生息する。この標本はスマトラ南部のジャンビ産のメスであり、前翅中央に黄白帯が見られるが、オスには見られないという。出谷さんの好意で入手した標本である。図鑑にはCharexes属を代表する種類とされている。
Charaxes setan セタンフタオ
セタンフタオ 左:表面、 右:裏面
これはバリ在住の出谷裕見氏が1983年に記載されたチョウで、スラウェシの東にあるペレン島から報告があるのみの分布の狭い珍品である。表面は殆んど黒で、第2脈の三角の短い尾状突起がある。ペレン島にはまだ行ったことがなく、出谷さんの好意で入手したチョウである。