ルリタテハの亜種について、 続き
白水隆著:原色台湾蝶類大図鑑のルリタテハの項には分布図と14の亜種の名前が記されている。私の標本箱にはこのうち5亜種があった。中国南部やインドシナ半島あたりに分布するものが元亜種で、種名と亜種名が同じとされるが、この標本は手元にないので、木曜社の「ラオス蝶類図譜」の写真を借用して比較してみた。まず分布図を調べて見よう。
これから比べて見るルリタテハの亜種は図に亜種名を示した。産地を列記すると次の通りである。
Kaniska canace no-japonicum 日本亜種、静岡県静岡市清水区三保産(2002年10月)
K. canace ishima 沖縄亜種、沖縄県、名護市多野岳産 (2005年9月)
K.canace drilon 台湾亜種、台湾、阿里山麓産 (1998年8月)
K.canace battakana インドネシア、スマトラ亜種、ススク産 (2019年5月)
K.canace javanica インドネシア、ジャワ亜種、アルゴプロ山産(2014年8月)
K.canace canace 中国南部亜種 ラオス産(図譜より写真借用)
日本で見るルリタテハはこの種の一番北東に住んでいる種になる。前翅に白い斑紋が明確で、ルリ色の帯は前翅・後翅とも同じ幅でつながる。しかし、南のインドネシアでは前翅に白紋が無くなり、ルリ色の帯は後翅で太く、幅広くなる。。
日本産:静岡市清水区三保産 前翅上部に2個の白い紋がある。
沖縄本島産:名護市多野岳産:前翅上部の白紋は少し薄れる。
台湾産:阿里山中腹産:前翅上部の白い紋が青色になり,るり色の帯は後翅で太い。
こちらには記事本文が入りますインドネシア、スマトラ産:前翅に白い紋は無く、ルリ色の帯は後翅
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インドネシア、ジャワ産:前翅上部の紋は青く、ルリ色の帯は前翅から太くなる。
ラオス産(木曜社の図鑑より)前翅の紋は青く、ルリ帯はあまり太くない。
ここには6枚の写真を示したが、生息する場所が変われば、斑紋などが変化して、区別がつくものがあり、このようなものは亜種が異なるとされる。
日本産からラオス産までの4枚の写真には後翅のルリ色の帯に黒い斑点があるが、南のインドネシア産の2枚には見られない。前翅上部の斑紋など変化しやすい形質があるようで、亜種を比較する時、注意が必要になる。